うまくいえないひとたち。

analfriskerのつどい

〈11月手紙企画〉

 

 

To Y

 

 


こんにちは。
台風も過ぎ去って、だんだん秋が肌に慣れはじめてきて、からたがきちんと冬を迎える準備をしはじめる頃合いですね、いかがおすごしですか。
といってもきっとここに書いてもどうせきちんとは見ないでしょうから、思いっきり普段ならあなたにいえないことを書いてみようとおもいます。

 

 

そちらの気候はよくわからないけども、たぶんきっと冬はわたしが想像しているよりかはちょっと寒さがきびしいのでしょうね。
わたしはあなたの健康状態をまだきちんとはよくわからないけども、どうか風邪はひかないように。わたしは毎冬かならず風邪もどきをひくので、パブロンSゴールドと子供用マスクがこれから手放せなくなるのです。

 

 

秋は、そういえば、あなたの家の近くの公園みたいな山に一緒に行きましたね。雨の降る中で見る紅葉は綺麗だった。泥の中を黒のパンプスで歩いて足がどれだけ汚くなろうが、あの景色はうつくしかった。わたしはうつくしいものを見るたびに心を救われているので、あなたとそれを見られたからあの時はきっとたぶんそこで死んでもよかったのだとおもう。雨の日に誰かと外を出歩く幸福ってなにより格別だと思うのですが、とにかくその日はとても印象的でした。

 

 

 

あなたと食事をすることがすこしずつ増えて寿司が苦手なわたしと寿司が好きなあなたとで手を取り合って回転寿司に行った時は「なんの恨みがあるのだろう」と本気で悩んだこと、あなたが煙草が嫌いなことを知ったあと1週間で手持ちの煙草をすべて行きつけのバーで吸いきってそれ以降は自分で買うことをやめたこと、酔っ払いからの電話が死ぬほど嫌いなわたしがなぜかあなたの場合にはそれが適用されないこと、それでも酔っ払って「あと5分以内に家にきて」なんて試されるように言われるとわたしはムキになって行ってやるぞと毎回吠えたててしまうこと、あなたのいろんな表情をみたくてつい焚きつけてしまうようなことばかり口に出してしまうこと、うつくしいものを見たら真っ先に伝えたくなってラインを開いてあなたの名前を探してしまってふいに冷静になっていつも連絡しないでおいておくこと、嫌われたくないともうどうしようもなく振り回してしまいたい気持ちとを行ったり来たりしていること、なぜすきなのかを問われてもわからない悔しさをいつも抱えていること、
でも決してこのかたちのない予感がただしいものだと、今までにないくらいに根拠もなくつよく信じていること。


ただ、すべての信念を折り曲げてあなたをすきでいても、どうしてもわたしは早く死にたくて堪らないし、いつかどんなことにも終わりが来ることの内に、あなたと会わなくなることが例にもれず含まれていることについてきちんとかなしみ泣きながら、それでもその別れ方がどういうものであれきっと受け入れるとおもいます。

 


それまでは、どうか一緒にいろんなものを見に行って、一緒にいろんなたのしいことをしませんか。

 

闇鍋だってまだしてないし、桜だって一度と言わずに何度でも見たほうがきっと楽しい、海はお嫌いですか?わたしは泳げないから見るだけでいいのですがぜひ嫌じゃなければどこかに行って潮干狩りをしませんか、わたしが貝を獲るのが上手なことを知らないでしょうからご覧にいれます、あとは秋にはわたしのだいすきな秋刀魚を食べて中秋の名月は見逃したくない、そしてまた冬が来たら今度はごま豆乳鍋をしましょう、もちろんキムチ鍋もしましょう、あなたは確か辛いのがお好きでしたよね。

 


そうしてどのくらいかも予想がつかないような年月を越えていつか、失うことすら怖いと思うまでにあなたがわたしの習慣になればいいとうっすらおもっています。

 

 

 

だからいつか、死ねない理由でいまを生きるわたしの、生きる理由に転じてくれないかなあ、なんておもっていたりするのはここだけの話にしておきましょうね。

 

 
いつかそんな夢みたいな日が来るのを本気で楽しみにしながら、またお会いしましょう。

 

 

 


From M