11月企画「手紙」
深夜に起きているだろう君へ
伝えたいことなど、特にないのだけれど、電波を介すのも、直接君とお話するのも飽きたので、手紙を書くことにしました。
僕の字は読みづらくないですか?
丁寧に書いたつもりだけれど、もしかすると、読みづらいところもあるかもしれません。
僕の頭の中は、ここのところ、ずっと何かに対する嫌悪と、そんな嫌悪に対する空虚な感情で満たされています。
君の頭の中は、どうですか?
いつもならわくわくしながらする散歩も、楽しみにしていた漫画の続きを読むことも、今の僕には出来そうもありません。
写真を撮るのが趣味だと前に言ったのを覚えていますか?
今の僕には、目に映る景色のどれもが目障りで仕方ありません。
あんなに、綺麗だったのにね。
君とは、よく散歩しましたね。
お互いによく知らない街をふらふら歩いたり、川沿いでくだらない話をしたり。
実は、目の前の街並みにレンズを向けながら、隣を歩いていたり、喫茶店で煙草に火をつけている君を撮りたいと思っていました。少し前までは。
それも、今の僕には出来そうもありません。
どうしてかな。
今の僕には、人に会うことが怖くて、かといって一人でいることすら苦痛になってしまいました。
助けてくれなんて言うのは、烏滸がましいからやめておくよ。
もうすぐ、冬が来ますね。
マフラーに埋もれる君の横顔を見るのは、好きです。
冷たい君の手に、少しだけ触れるのが好きです。
僕の体温に犯される前の、冷たい手が。
でも、きっともう君の手に触れることはないでしょう。
僕が美しいと思っている君のままでいてください。
それでは、お元気で。
追伸
次に触れるときは、僕からではなく、君からがいいな。
×××より
@percent_1335