うまくいえないひとたち。

analfriskerのつどい

Lamp

シャワーを浴びていて、ふいに飛び込んできた水が甘かった。

 

あるアーティストの歌詞を思い出して「最近は髪も爪も切らず/復讐もガソリン切れさ/何にも食べたくないし/ずっと考えている」。

 

何日も外に出ずに、部屋にうずくまっていて、食事も怠って、夜になった。空腹を感じて外に出ると、軽食屋の灯りがまぶしくて、それが恐ろしくて、なぜだか、とても恐ろしくて、いつの間にか食欲はなくなっていた。『蛇にピアス』、「夜にしか生きられない」。映画で観たあの呟きが時々頭に浮かぶ、今夜はそんな夜だった。

ひとが生きるための灯り、が怖かった。

 

何も食べずに、煙草だけ吸って帰ってきて、ここを思い出した。うまく言えない、から。自分のブログは何か月も更新していない。何もかも、うまく言えない。完全に社会不適合者のそれ。誰よりも、うまく言えない、それだけは自信を持ってもいい。と(例えば、太宰治のように)感じた。

 

効かない薬をあおってから、そんなことをここに書こうと考えながら、食器を洗った。久しぶりにシャワーを浴びて、歯も磨いた。いろいろ書こうと思ったことがあったけれど、それは大したことではなかったらしい。もう、特に書くことはありません。

 

(エクスキューズ。以前企画のときに、順番が回ってきたのに、何も思いつかずに、何も言えずにそのまますっぽかしてしまって、それを忘れて、最近気づいて、大変申し訳なく思っています。他にもそういう方、いるかもしれない。厚顔無恥、そんなひと私の他にいないでしょう、その人の分も謝ります。ごめんなさい。)

 

「効かない薬ばかり転がってるけど/ここに声も無いのに/一体何を信じれば?」

 

不意に飛び込んできた甘い水とは何のこと?一縷の蜘蛛の糸。手繰り寄せて、明日に届くか知らん。

明るい空、スーツを着て働く人たち、繁華街を歩く観光客やはしゃぐ学生たち。それらを、見ている人が私。

私はただ、見ている。

なんて声をかけたらいいのだろう。

声にならないから、あなた、と肩を叩いたら、あっさりと不審から拒絶へ変わる眼差しを眼前にして、あなたはどこにもいない。

私は灯りに、陽の、生きるための、灯りの下で生きている<ひと>にはなれない。だから小声で、ここで、あなた、と呟いてみる。あなたの眼差しが見えるように、それが見えるだけの、小さな灯りをひとつだけともして。もしも、そんなことができるのなら。

 

うまく言えないのなら、言葉の断片でもいい。単語を数珠つなぎに並べて、言の葉がそらに舞うに任せてもいい。そう思えたら、少しは、或いは。どこにその場所はあるだろう、どこにあなたはいるだろう?そう、ここにしかない。だから私はしばらく私に耽溺する。そのままその海に沈んでいて、うっすら目を開けていたら、水面から差し込んでくる陽の輝きを目にするかもしれない。そしてそうっと手を伸ばすかもしれない。

 

何かを書くということは、誰かに宛てて、ということもあるのだろうけれど、私にとっては、書くということは、私のなかに沈み込む手段である。だから今はひたすら書いていたいのだけれど、この場所の不文律の境を越えないように、ここまでにします。お目汚し、失礼しました。エクスキューズ、ミー。左様なら。