うまくいえないひとたち。

analfriskerのつどい

《10月企画バトン》ハッピーエンド

彼女いない歴=年齢がそうでなくなったのは高校二年の冬だった。

 

女子どころか男子と話すのすらあまり得意でなかった僕に彼女が出来るなんて少しも思っていなかった。それまでの人生で一番驚いて、その驚きは間もなくして幸福感に変わっていった。

 

付き合い始め。学校が終わると暗くなった雪の降る田舎のあぜ道を、手を繋いで彼女を家まで送った。僕の家は全然反対方向だけれども、そんな事は全く気にもしなかった。家まで送りとどけると彼女は別れ際に『今日もありがとう』って頭をぽんぽんしてくれる。彼女は照れて何も言えなくなる僕を面白がって嬉しそうな顔をする。こういうのを幸せっていうのかなってあの頃の僕は本気で思っていた。

 

— そういうふうにスタートした僕と彼女の関係は2年目を迎えることなく破局を迎えることになる。

 

当時の僕としては、なにがなんだかよく分からないまますれ違う事が多くなり、彼女が怒る回数も増えていき。そうこうしているうちに僕が地元を離れてしまったことで遠距離になって、お互いの気持ちが冷めてしまい。別れるべくして別れることになった、という感じだった。気づいた時には連絡すら返してもらえない程嫌われてしまっていた。

 

数年たった今改めて思い返してみると、別れる事になってしまった一番の原因は彼女と付き合う事が出来たことを<<ハッピーエンド>>だと、僕は無意識のうちにそう思っていたからなのかもしれない。

 

彼女と恋人関係になれたということは先に書いたようにとても幸せな事だった。ただその付き合う事が決まった瞬間とその付き合い始めに感じていた幸福感があまりにも大きかったせいか、その幸福感と実際に付き合い始めてから出来る角質やすれ違いに大きな隔たりを感じてしまうことが少なくなかった。

 

半年くらいしてくると喧嘩をする事が増えていく。その度にいつも、僕は彼女と一緒にいられるだけで幸せなのに、なんで彼女はこんな些細な事を気にして怒るのだろう。彼女は僕と一緒にいてもちっとも幸せじゃないのかもしれない 。そう思うようになっていった。

 

彼女が些細な事で怒ったりするのは、僕達が付き合うことになったことをゴールとか終わりじゃなくて始まりと考えていたからだ。それは僕とは真逆の態度だった。丁度良い塩梅で2人が心地良くいられるこれからの関係を育んでいくために。そのために必要な話し合いを持つことを彼女は望んでいたのだ。僕はそれを今自分が幸せだからという一方的な理由で半ば拒んでしまっていた。

 

好きな人と付き合うという事はとても幸せな事だけれども、それはゴールじゃなくて、むしろハッピーエンドを築きあげていくためのスタートで。そんな当然の事を当時の僕は全然理解していなかった。恋愛ゲームでの恋愛しか経験してこなかった僕は、付き合うまでのことは知っていても、付き合ってからのことはよく分かっていなくて。結果、僕の始めての恋愛は残念なかたちで終わってしまう。

 

もし昔に戻ってあの頃の僕にひとつアドバイスを贈れるのだとしたら。付き合い始めで馬鹿みたいに浮かれている僕に言ってあげたい。

 

『幸せに浸りすぎるのも程々に。何が本当のハッピーエンドか冷静に考えて。その子と別れることになると、少なくとも25歳まではまた一人ぼっちの寂しい生活を送ることになるからね』って。

 

どうせ耳を貸す事はないのだろうけれども。

 

 

nayuki(@nayukinz)