うまくいえないひとたち。

analfriskerのつどい

2017.12.14 消印 Y→K

お手紙ありがとう。限りある時間をあなたと過ごしたいというあなたからの言葉が嬉しかったです。私もあなたも、お互いの両親にまだ紹介し合ってはいないけれど、どうしてだろう、一緒にいて触れ合った肌の地平に永遠がいつも見えるのです。その先を信じてみたくなる。

お察しのとおり、嫉妬しています、あなたの過去に出会ってきたひと一人一人に。愛の深さを証明する一番簡単な方法、あるいは最も効果的な復讐は、ひどい仕打ちを受けても、これまで以上に深いやさしさとこうふくの装いで逆襲のように相手を愛する事なんだと最近ようやく気付きました。人はそうして天使になるのでしょう、ことに、心から好きな人のいる女性は天国の近所に住んでいるようなもので、扉をノックして訪ねればそこはもう天使の住む場所なのです。私の言いたいのは、天使になるのは、水の上を歩くようなことなのではなく、ごく簡単なことなんだということです、ただ、それだけ。

ウェルテルがシャルロッテに恋する瞬間を思い出せますか。シャルロッテが子供たちにパンを配って笑顔でたしなめたり、なだめたりしているのです。ウェルテルはシャルロッテを天使、と言いました。天使とは、生き様ではないんです。ひとつのタブロー(絵、場面)のことなのです。

あなたはまだ幼い少年のような性質がひそんでいるから、きっと、私の言う意味が理解できないかもしれない。私が証明しているように、深く愛するようになったことに気づくには、相手からの理不尽に喜ぶようになったらそうだということです。その点、あなたは充分すぎるほど私には理不尽だ。まず、私にもっと早く出会わなかったこと、それまでにたくさんの別な人と恋に落ちてきたこと、離れ離れの時間にいろんな遊びをおぼえたこと、私以上に慕情をおぼえる人間がまだひとりいる可能性があること。私は本当はあなたに理不尽になりたい。そうして、そのときでないと信じられない王子様のようにあなたから愛されたい、大胆に、敬虔に、とびきり親切に。

では、また。お手紙を書きます。

 

DEAR  K  FROM  Y