うまくいえないひとたち。

analfriskerのつどい

適切なフィクションに関する独り寝

 仕事がつらくて、苦しい。恋人と一緒に過ごす夜は、しずかであたたかく、やわらかい時間の手触りがある。愛している、というよりも先に朝が来て、もうひとりで玄関の扉をあけなくてはならない。そこには逃げ場所や逃げ道がなく、私はどうしようもなく不適切だ。

 不適切。適切な世界における自分自身のこと。他者はいつだって適切だ。

 彼が薬をODした。ごめんね、と私にさっと謝って、逃げ水のような声の響きだった。手首を切って泣いた母親の水にぬれた声とは違っていた。

 靴を脱ぎ捨てて、この適切な世界からはだしで走り出して逃げてしまいたい。何を求めるというのでもなく、あなたの愛に疲れたら、ひっそりと一人で眠るのもいいものだ。