うまくいえないひとたち。

analfriskerのつどい

9月23日

あなたは朝が苦手だった。

映画の予定に間に合わなくなって不機嫌なわたしを小馬鹿にしたような寝癖を付けて、平然と寝息を立てているあなたに溜息ひとつ。机の上にあったマッチ箱を手に取って、煙草を灯した。

ベッドの縁に腕をかけて、広くて薄い背中を見つめた。煙を吹きかけてみると、白いTシャツがうっすらと揺れてまるで雲のようだった。首筋にある小さなホクロは金星かな、なんて思っている間に気付けば灰が落ちてしまっていて、慌てて手で払い落とした、溜息ふたつ。もしもあなたが起きていたならば、洗濯当番だけじゃ済まされなかっただろう。 

テレビの中では朝のニュースがせかせかと伝えられている。虫の声ほどのそれは、わたしとはあまりにも程遠いところにあって、まるで遠い国のお伽噺のように聞こえた。

昔々あるところに、街外れの小さな部屋がありました。嫌味なほどに派手な字体で、わたしの知らないホテルの名前が描かれているマッチ箱をそっと同じ場所に戻した。

その部屋には物分かりが良い女と、都合の良い男が、とてもとても仲良く暮らしていました。この一本を吸い終えたら、呑気に寝返りを打っているあなたを揺すり起こして、レンタルショップに連れ出そう。

今日の天気は晴れのち雨、いかにも落ち込んでいるかのようなトーンとわざとらしい表情でキャスターが報じた。ごうんごうん、と小気味よい音を鳴らしている洗濯機を睨みつけ、溜息みっつ。

 

お互いがお互いを支えあって、幸せに過ごしていましたとさ。