うまくいえないひとたち。

analfriskerのつどい

誠意って、何かね

夏はもう、私達を置いてどこかへ行ってしまったようで。
どうもこんばんは。
あなたの街の 瀬戸内寂聴、マイティー猿です。
愛、覚えていますか?

 

さてさて先日、消防署が毎年マイカンパニーにて行う救急救命講習なるものに参加してきた話でございます。
「あっ、負傷者を発見!あなたは119番を、あなたはAEDを探してきて下さい!」
というアレである。アレだよアレアレ。そう、まさし。まさしだよ。

 


毎年行われているとは言え、やはり社員の数が多い。その為誰も彼もを参加させるわけにもいかず、何年かに一度、指名され参加する程度のものなのだ。
確か私が最後に受けたのは3年前である。
内容などサッパリ覚えていない。


それもそのハズ3年といえば永遠とも思える長い時間である。
おおよその読者諸賢におかれましてはまだ胚であった位の太古の昔。
遡れば命の輪廻はぐるぐるり。

 回る 回るよ 時代は回る

出会いと 別れを 繰り返し
今日は別れた恋人達も 生まれ変わって
巡り会うし私はまだステゴザウルスであった頃なのだ。
覚えていようはずもない。
アロサウルスはダチよダチ。マブ。

 


それだけに、非常に新鮮な気持ちで今回の講習に臨む事ができた。
こんな……こんな心をキュッと締め付けるドラマパート映像を流していただろうか。

 

次から次へと老若ニャンにょ……老若からのiPhoneの予測変換第1位がコレだったのだから勘弁してほしい。

これがイノベーションなのだ。
老若ニャンにょ御構い無しに心の臓が止まり、帰らぬ人となってゆく。

 

倒れてから処置を受けるまでのシビアな時間猶予。
時を経れば経る程生存率は勿論社会復帰の可能性も低下してゆく。
ああいうドラマパートを、世の皆々様はどのように見るのであろうか。

 

猿はというと、それはもう異様に感情移入していた。
ヤバいヤツのバイヤーな部分。

 

制作側の意図としては
「こんなケースやこんなケース、たくさんあるから注意してね。」なのだろうが
こちとらそれどころじゃあない。俺は最早スクリーンの中にいるのだ。

 

 

正しい知識を持った通行人に助けられ、見事社会復帰まで果たす人がいる一方で

誰も助けずわあわあと騒ぐばかり、救急隊員が到着する頃にはもう助かる見込みの無いという人……

 

とぷん、と真っ直ぐ指先から、ほとんどしぶきもあげずに潜ってしまった妄想の世界の中では、
私の娘が突然胸を押さえ倒れて緊急搬送されたという報せを受けていた。

 

いや娘なんかいないんですけどね。
なにせ私は今年の3月に小学校を卒業したところである。
仰げば尊し 我が師の恩。
貴様と俺とは同期の桜。
現実世界の私はまだほとんどベイビーなのだ。

 

なのだがそこは妄想である。
娘が、いる。上戸彩に似ている。
何がhiroだ、君にOTO-SANと呼ばれる筋合いは無い。
メンバーにもならない。誠意って、何かね。
帰ってくれ、そして、踊ってくれ……
So, Rising Sun 陽はまたのぼってゆく
So, Rising Sun 夜明けはそばに来てる
その光がここから どこまでも広がってく‥‥
So, Rise, Rising Sun……

 


その娘が、彩が、緊急搬送されたというのだ。
私が報せを受けた時には幸いにも意識を取り戻し始めていたとの事。

 

お父さん、もし仮に発見がもう数分遅かったとしたら、
娘さんは……いえ、やめましょう。彩さんは助かりました。
後遺症もなく、何事もなかったように明日からも学校へ通えますよ。
あちらの方が、倒れている彩さんを見つけ通報をして下さいました。

 

そう言って医者が紹介してくれた男性は、
年の頃は5.60程だろうか。
年齢の割にしっかりとした体つきをしており、何とも優しそうな笑顔をしている。

 

その男性のゴツゴツとした、私ですら父性を感じるような男らしい手を強く握り、
そして深く、深く頭を下げた。

 


あれからというもの、毎年同じ日に、
手紙と、娘の写真を添えた贈り物を男性に贈っている。

『あなたが助けて下さった娘が、今年で10歳になりました。』
『彩は今年から高校生です。』
『時が経つのは早いもので、あれから15年になりますね。』

今では私からの便りで、秋の訪れを感じるという。


彩もやはり感謝しているのだろう。
普段は写真に撮られるのは嫌がるくせに、この時期は何のための写真なのかなんとなくわかるらしい。一枚だけは素直に撮らせてくれるのだ。
ほんとうに、いい子に育ってくれた……


ことわっておくが、全て妄想である。
現実の私は娘もいなけりゃ精通もまだ。
年齢に至っては1桁なのである。

 

それでも、あの講習DVDを見ながら感謝の涙が頬を伝った。
コレはマジだ。
読者諸賢にはここで謝らなければいけないが、
このクソ長い文章のほぼ全ては虚言である。
ステゴザウルスであった過去もなければアロサウルスともマブではない。アレは敵だ。
EXILEに勧誘されてもなけりゃ貴様と俺とは同期の桜でもないのである。

 

しかし毎年贈り物をし、
すくすくと育つ彩の事を思い感謝から涙してしまった事、
残念ながらコレはマジのマジ、マージマタンゴなのだ。
DQ6派のナイスミドルに対してはウインドマージの方が分かりやすいか。

 


そう、感謝。
彩は生きている。幸せに育っている。
それだけでもう何事にも代え難い。
他になにを望むことがあるだろうか。

 

hiro君といったね、ツラくあたってしまってすまなかった。

 

……分かった。
今日から、今日から彩と、君と、私は家族だ……
そして、今日から私はEXILEのSARUだ……

 

So, Rising Sun 陽はまたのぼってゆく
So, Rising Sun 夜明けはそばに来てる
その光がここから どこまでも広がってく‥‥
So, Rise, Rising Sun……

 So, Rise, Rising Sun……
So, Rise, Rising Sun……

 

                                            -fin-