においについて
季節の変わり目は匂いから知る。暖かさ、涼しさ、寒さ、暑さ、みな、そのあとにくる。秋は金木犀、春は桜?花の香りなら、暖かくなってから、暑さが過ぎてから。でも、そうではない、匂い。何の匂いなのだかは分からない。
今年も、ああ、もう秋か、と、夜歩いていて思った。その匂いが鼻腔をくすぐったから。まだ、暑かった。3日して急に涼しくなった。虫も鳴きだした。秋が訪れた。
何の匂いなのだろう?
雨の匂いはペトリコール、というらしい。調べると化学式など、いろんなことが書いてある。この不思議な季節の匂いというものも、いつか解明されるのだろうか。あまり期待してない。どっちでもいいからね。
梔子の花の香りを知ってる?
淀君の 墓梔子の 白似合ふ (池田とみ子)
梔子の香りを知らなかったら、この歌でどんな香りを思い浮かべる?知らない香りはどんな香りだろう?
私は梔子の香りを知らなかった。当時、懸想人が好んでいると聞いたガーデニアの香水を知りたくて、この歌だけを携えて、どの花だろう、この花か、あの花か。と歩き回っていた。高貴な女性の墓……淀君は気が強い女性だったらしい……
3年ほど知らずに考えていたけれど、気づいたら今年の春、住居の近所で咲いていた。ひとに教わった。この花が梔子。そのとき、その香りは、ずっと探していた香りとは違った。もっと、こう……。ガーデニアは(くちなし)で、「梔子」ではなかったのかもしれない。
香りと言えば、プルースト。失われた時を求めて。失われた時を求めて、香りという紐で記憶を手繰り寄せる。香りは記憶と密接に結びついているから。
視覚も、聴覚も、触覚すらも、いまやインターネットで伝達可能な時代だけれど、嗅覚だけは、まだ。この不可思議な領域には、いろんなファンタジーが詰まっている。季節を知らせる香り、知らない香り、記憶と結びついた香り。
私がおすすめするのは、知らない香りの、歌を読んで、どんな香りが想像を巡らせてみること。これはとっても面白いと思います。歌にある視覚や聴覚や触覚の情報から、イメージを膨らませて、嗅覚を感じ取ってみる。短歌や俳句の豊かさって、そのイメージのふくらみにあるから、とても楽し旅になると思いますので、ぜひ。
ところで、私、初めてここに書き込みさせていただきました。毎日更新を楽しみにみなさんのブログを読ませていただいてます。これからどうぞよろしくお願いします。