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analfriskerのつどい

『ラ・ラ・ランド』 〜 現実はいつも厳しい

2012年に『レ・ミゼラブル』でアン・ハサウェイが「I Dreamed a Dream」を歌い上げ、助演女優賞でオスカーを獲得してから5年という月日が流れた2017年、ロサンゼルスの街で暮らすワナビーたちが、今にも破れてしまいそうな夢を見ながら現実と向かい合うミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』が公開された。

 

恋人が予告を観るたびに観たい観たいと繰り返していて、なんだか逆に冷めていたというか、そこまでの熱量もなく付いていった映画館で、僕はスクリーンに映し出された物語に釘付けになった。上映終了後、恋人の数倍の熱量で感動を語ってしまった。早口で喋ることオタクの如しである。

 

核心に迫る内容を書きたい。以下ネタバレである。まぁ観に行けや。損はしないよ。すごくよくできてる。

 

 

※※※ネタバレします※※※

 

 

冒頭。渋滞中の高速道路で、大人数のド派手なダンス。歌われるのは「明日は新しい日で、いつか夢は叶う」という内容の明るいナンバー。現実にありえない光景。高速で人々が次々に車から降りてきて、歌って踊る。まさしく夢の空間。

それはそうだ。現実には、夢を追う人の列は大渋滞。明日まで待とうが車は全然動きそうにない。「夢は叶う」なんて言葉は大きな嘘。自分をギリギリ騙すための祈りの言葉だ。

 

ヒロインのミア(エマ・ストーン)は女優志望。オーディションを受けたところで、ロクに取り合ってもらえないような毎日。

主人公のセバスチャン(ライアン・ゴズリング)はピアニスト。時代遅れになりつつあるジャズにこだわるが、演奏したくてもさせてもらえる環境すらなくなっていき、好きな曲を演奏できる自分のジャズバーを出店することが夢だ。

 

ふたりは夢をみる。しかし現実は非情だ。打ちひしがれる。自己実現の機会を求めてもNOを突き付けられる毎日。それでも夢をみる。夢を追えば追うほど、現実を見るのはつらくなる。夢を捨てたら夢を追った月日は無意味になるのだから。

出会ったふたりは、夢を追う相手に、夢を追う自分の姿を重ねた。すぐに惹かれ合い、支え合う関係になる。

 

ミュージカルナンバーがかかるのはラブリーでスイートな夢や恋の世界に没入していく瞬間か、諦められない夢や輝かしい未来を語るとき。それは全編を通して徹底されていた。そして曲が終わると、必ず厳しい現実が突き付けられる。オープニングからエンディングまでずっとだ。楽しくて華やかな歌と踊りで、映像と音声のテンションが上がれば上がるほど、現実に立ち戻ったときのみじめさが際立つ。

 

要するに「おとぎの国」を意味するタイトルが冠されたこの『ラ・ラ・ランド』という作品で描かれているのは、決して夢と希望と恋のめくるめく世界などではない。キラキラした夢で人を魅了するステージには、必ず舞台裏の人間臭い世界があるということだ。僕たちが懸命に生きる現実は、全然都合よく割り切れないということなのだ。

 

流石にここまで読んで、まだ観てなくてこれから観に行きたいという人はいないと思うから言ってしまうけど、はっきり言ってステレオタイプなハッピーエンドとは程遠いじゃないか。

互いに夢の実現を誓い合って、永遠の愛を語って、それで離れ離れになったふたりの間に5年という月日が流れ、互いに夢を叶えたら。物語は普通どのように閉じられるものなのか。

当然、再会してキスして結婚してハッピーエンド。この流れではないのか。それがフィクションにおける自然な理路なのではないか。映画館は非日常を提供するんだから、そこではカタルシスが差し出されるべきなんだ、観客はお約束を求めているんだ、という。

 

『ラ・ラ・ランド』は、そんなもんは大嘘だ全部クソ喰らえとハッキリ言ってしまった。

セバスチャンは、街に貼られたミアの大きなポスターを横目に見ながら、念願のジャズバーにミアが提案した名前をつけ、いつかミアが来る日を待ち望んでいる。

しかし大女優になったミアは、セバスチャンではない、金を持ってそうな他の男と結婚して、あろうことか子供までいるのだ。

そうだ。そうなんだ。これが現実だ。スーパースターの女優様が、修行時代に付き合ってたピアニストと一途に結ばれるなんてあり得ないんだ。だってそうだろ。なんでわざわざ苦労した時代を噛み締めなきゃいけないんだ。華やかな世界を目指したんだから華やかな相手と華やかな人生を送るんだよ。

ラストシーン、ピアノの前に座るセブに微笑みかけるミア。なんとも言えない表情で返すセブ。お互い夢叶ってよかったわね、ありがとう、おめでとうみたいな表情のミア。なんとも言えない表情のセブ。なんとも言えない。

 

『ラ・ラ・ランド』は最高に痛快な作品だった。人間は矛盾するし、嘘をつくし、嘘でもついて自分を騙しているくらいじゃないと夢なんか見ていられないのだ。現実はいつも厳しいのだ。

細かいところまでこだわられている作品なので、まだまだ言いたいことはあるけれど、キリがないので、今日はここまで。もう1回観に行こうかな。