不変の国
私は私自身の身の丈にあった言葉で、私のことを語りたい。
伸ばした腕が届く範囲の、半径1mちょっとの世界の中にある言葉たちだけ。それ以上のことを言ったって、メッキはいつか剥がれるのだ。
ゆうべ、私は早くも押入れから掛けぶとんを出してしまった。柔らかくて暖かい重み。
ふとんの国は幸せと貧しさが同居する国だ。そこには多くの安寧と少しの背徳がある。ふとんにもぐるのが早い時間であればあるほど、その中毒性が運んでくる快感は大きくなり、人を怠惰にしていく。
だらしない生活を続けると、自分でも気が付かないうちにこころが貧しくなる。なにも生産せずに、消費すべきエネルギーも消費できず、なのに限りある時間はきちんと減っていくからだ。当たり前に湧いていた力も、いつの間にか湧いてこなくなる。
それでも私はふとんの国を愛している。私がどんなに変わっても、ふとんはいつだって暖かく迎えてくれるからだ。ふとんにどんなにひどい扱いをしたとしても、ふとんは私を裏切らない。
だけどそろそろラブイズオーヴァーだ。悲しいけれど終わりにしよう。キリがないから。
いや、実際のところはすでにちょっと遅刻のラインなんですけど。ほんと無理。逆に出られない。