うまくいえないひとたち。

analfriskerのつどい

《10月企画バトン》ハッピーエンド

彼女いない歴=年齢がそうでなくなったのは高校二年の冬だった。

 

女子どころか男子と話すのすらあまり得意でなかった僕に彼女が出来るなんて少しも思っていなかった。それまでの人生で一番驚いて、その驚きは間もなくして幸福感に変わっていった。

 

付き合い始め。学校が終わると暗くなった雪の降る田舎のあぜ道を、手を繋いで彼女を家まで送った。僕の家は全然反対方向だけれども、そんな事は全く気にもしなかった。家まで送りとどけると彼女は別れ際に『今日もありがとう』って頭をぽんぽんしてくれる。彼女は照れて何も言えなくなる僕を面白がって嬉しそうな顔をする。こういうのを幸せっていうのかなってあの頃の僕は本気で思っていた。

 

— そういうふうにスタートした僕と彼女の関係は2年目を迎えることなく破局を迎えることになる。

 

当時の僕としては、なにがなんだかよく分からないまますれ違う事が多くなり、彼女が怒る回数も増えていき。そうこうしているうちに僕が地元を離れてしまったことで遠距離になって、お互いの気持ちが冷めてしまい。別れるべくして別れることになった、という感じだった。気づいた時には連絡すら返してもらえない程嫌われてしまっていた。

 

数年たった今改めて思い返してみると、別れる事になってしまった一番の原因は彼女と付き合う事が出来たことを<<ハッピーエンド>>だと、僕は無意識のうちにそう思っていたからなのかもしれない。

 

彼女と恋人関係になれたということは先に書いたようにとても幸せな事だった。ただその付き合う事が決まった瞬間とその付き合い始めに感じていた幸福感があまりにも大きかったせいか、その幸福感と実際に付き合い始めてから出来る角質やすれ違いに大きな隔たりを感じてしまうことが少なくなかった。

 

半年くらいしてくると喧嘩をする事が増えていく。その度にいつも、僕は彼女と一緒にいられるだけで幸せなのに、なんで彼女はこんな些細な事を気にして怒るのだろう。彼女は僕と一緒にいてもちっとも幸せじゃないのかもしれない 。そう思うようになっていった。

 

彼女が些細な事で怒ったりするのは、僕達が付き合うことになったことをゴールとか終わりじゃなくて始まりと考えていたからだ。それは僕とは真逆の態度だった。丁度良い塩梅で2人が心地良くいられるこれからの関係を育んでいくために。そのために必要な話し合いを持つことを彼女は望んでいたのだ。僕はそれを今自分が幸せだからという一方的な理由で半ば拒んでしまっていた。

 

好きな人と付き合うという事はとても幸せな事だけれども、それはゴールじゃなくて、むしろハッピーエンドを築きあげていくためのスタートで。そんな当然の事を当時の僕は全然理解していなかった。恋愛ゲームでの恋愛しか経験してこなかった僕は、付き合うまでのことは知っていても、付き合ってからのことはよく分かっていなくて。結果、僕の始めての恋愛は残念なかたちで終わってしまう。

 

もし昔に戻ってあの頃の僕にひとつアドバイスを贈れるのだとしたら。付き合い始めで馬鹿みたいに浮かれている僕に言ってあげたい。

 

『幸せに浸りすぎるのも程々に。何が本当のハッピーエンドか冷静に考えて。その子と別れることになると、少なくとも25歳まではまた一人ぼっちの寂しい生活を送ることになるからね』って。

 

どうせ耳を貸す事はないのだろうけれども。

 

 

nayuki(@nayukinz)


ばたばたと叩きつけるように雨が降っている。目が痛くなるほどに眩しいネオンに囲まれた駅前、ハザードランプが縦並ぶロータリー。忙しなく入れ替わり続ける車たちに、濡れる肩もいとわず駆け寄っていく人々の表情は、今の天気に似合わず華やいでいた。

わたしは駅構内の薄ぼんやりとした灯りを頼りに、手元の文庫本を追っていた。辺りを行き交う人からの奇異な視線を度々感じたけれど、それでも居心地は悪くなかった。だって、わたしは待っているのだから。

腕時計に目をやると、ちょうど短針と長針がぴったりと頂点で落ち合っているところだった。背筋をぴんと伸ばして重なり合ったそのふたりの上を、秒針が素知らぬ顔でするりと通り過ぎた時、それに続くようにふたりも歩を進める。それを繰り返していくうちに、出会ったはずのふたりの隙間は徐々に、だけど確かに広がっていった。

ふと、ぱたん、と何かが倒れたような軽い音が聞こえた。文庫本をコートのポケットに閉まい、もつれていた意識を周囲に戻した。

目の前にはアルコールのつんとした匂いを撒き散らしながら、ぎゃあぎゃあと小突き合っているよれたスーツ姿の群れ。足元には壁に立てかけていたはずの傘が倒れていた。白地に薄いピンクの花模様、その野暮ったさがどことなく気に入って、今年の春に買った。

横たわった傘を見下ろす様に、わたしのおへそぐらいまである真っ黒い傘がもう一本、憮然とした態度で壁にもたれかかっていた。ここまで連れてきてやったんだぞ、と呟きながら、傘を拾い上げた。

わたしの部屋からこの駅までの道程、ふたり分の傘を両手に持って歩くわたしは不格好で、少しの恥ずかしさもあったけれど、それでも気分は悪くなかった。だって、わたしは雨に濡れなかったから。

かつて、あなたと同じ傘の下、その道を歩いたことがあった。寄り添い合うように並べた、背丈の違うふたつの傘を見て、何故か寂しく思えたのは、この既視感だったのかもしれない。

時計盤のふたりはもう、ついさっきの出会いは嘘だったかのように、お互いがちぐはぐな方角を向いていた。目線も歩幅も違うふたりは、いつもどちらかが雨に濡れてしまっていて。

中越しに聞こえてくる雨音に紛れて、改札奥のプラットホームに続く階段からはたくさんの足音が聞こえてきた。それはすぐに人の波に変わって、まるで洪水のようにあっという間に、わたしのすぐ近くまで流れ込んできた。慣れた手つきで足早に改札を抜けた人々は、夜に溶け込むようにして、ほろほろと姿を消していった。最終電車が過ぎ去って役目を終えた駅は、大人の匂いをほのかに残したまま、朝の訪れを独りでに待っていた。

わたしの背丈に不釣り合いなその黒い傘は、部屋のどこに仕舞い込んでも、この街を離れても、いくら時間が流れても、まるで忘れられなかった。

あなたとわたしの最寄り駅だった、何度も降り立ったこの場所に、もう二度と重なることがないように、寒い冬が襲いかかってくる前に、そっと捨て去っていこうと決めた。

向かうべき場所も違ったふたりには、傘が二本、必要だったんだ。

《10月企画バトン》20代最後の日

何も代わり映えしないルーティンの中で、数字がひとつ増え、10の位が変わる。たったそれだけのことをいかに楽しめるか。そういうチャレンジをしてみたんですけどね。

本当に何も、何も変わりなく、穏やかに日は過ぎていき、ただ満ち足りて暮らすことしかできませんでした。

みなさんどうもこんばんは。柔軟剤は使ってませんでお馴染み、ふわっふわの毛布です。3度の飯より定時帰宅が好きな29歳、本日は2時間残業からのコンビニ飯でフィニッシュ。10月12日で30歳になります。20歳のときの座右の銘は「インパラは倒れない」でした。よろしくどうぞ。

 

 

 

 

さぁここで!突然ですが!
20代のとき嫌いだったものランキングのコーナー!
どんどんどん!パフッ!パフ〜〜〜!!!

 

はじめるよ!まずは第5位!

 

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第5位【ジャスミンティー】

  

いや〜これは地味ですね〜。ジャスミンティーというなんともいじり甲斐のないものが5位にくるやつですよ。

「オッ、置きにきたねふわ毛さん、そうやってすぐ助走とるじゃ〜ん?」って感じで嫌いじゃないんですけどね、いかんせん地味ですね〜。
なんなら人の好意を蹴り飛ばしてコーラ買ってこいとかワガママなことぬかす先輩の方が嫌いかもしれませんね〜。むしろそこまでジャスミンティー嫌いじゃない感じまでありますね〜。

強いて言うなら、匂いが先行してきて、飲んでみると匂いと味にギャップを感じるあたりが好きじゃないですけど、そんなのは瑣末なことですね〜。30歳になったらジャスミンティーのこと好きになりたいですね〜。

 

 

 

 

さぁ!続いて第4位!

 

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第4位【職場の人と話すこと】

 

あっ、この辺から割と嫌いですね。僕の人生には必要ないやつです。
僕は人間性があまり真っ直ぐではないタイプなので、うっかり気を許すと余計なことを口走ってしまいますからね。余計なことが積もり積もっていくと、最終的にはエネミーが現れてしまいます。
メンズがパブリックにゴーするとセブンエネミーズがホニャホニャみたいなこと、古くは日本書紀あたりから記述があるとかないとか言いますが、蘇我さんちの入鹿くんも中大兄プリンスによってアサシネーションですし、気を付けないといけませんよね。セルフケア!
そんなわけで職場の人と話したくありません。塩も砂糖も入ってない卵焼き食う方がマシです。

 

 

 


どんどん行くぞ!第3位〜〜!

 

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第3位【歯医者】

 

時は21世紀。コンビニにもやしが売ってる時代ですよ。
そんな時代なのに、虫歯になったら歯医者に行って口の中にドリルを突っ込まれ、ゴリゴリゴリゴリ、血と唾液をシュゴオオオオオオ。これって一体どういうことなんですか。
僕たち私たちが夢に描いた21世紀はコレだったんでしょうか。もっとハイパーテクノロジーがスパークしてて、メカニカルなシステムで菌をドーン!みたいなことでしょ。

YESリニアモーターカー、NOデンタルクリニックですよ。
せめて、せめてもう二度とえづかなくて済む歯ブラシを開発してほしいところですね。おっさんの喉をなめちゃいけませんよ。いとも簡単にえづくんだから。

 

 

 

 

そして惜しくも優勝を逃した注目の第2位!!

 

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第2位【味噌汁】

 

オイ、そこのふわ毛ビギナー。アンタ今「うそでしょ?そんな人いるの?日本人?」って思っただろ。それならもう日本人じゃなくていいよ。ノルウェーに移住させてくれ。ノルウェーで木こりになるよアタイは。
味噌汁嫌いの件はもう散々既出なので簡潔に済ませますが、許可もなく勝手に沈殿するから嫌いなんですよね。
ふざけやがって。生意気なんだよ。もともとは豆のくせに。

 

 

 

 

さぁ!20代のときに嫌いだったものランキング、栄えある第1位に輝いたのは〜〜?!

 

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第1位【同窓会】

 

同窓会が優勝〜〜!あーもう嫌いだわ〜〜!
もうね、一瞬歯医者の方が嫌いかなと思った時期もあったんですけど、やっぱり同窓会が嫌いですね。同窓会のここが嫌だランキングが個別に存在するくらいダメですね。オイ学生時代の同級生の結婚式、お前も同罪だからな。

 

同窓会の何がダメって、よく知らねぇ奴が知った顔で話しかけてくる上に、ノッてやらないと空気が悪くなるところなんですよね。なんだあの薄氷みたいなやつ。割るんじゃねぇぞって言いながらこっちの善意に全て委ねてきやがる。そもそも今話しかけてきてるお前のこと学生時代嫌いだったからね。

あーあーほらそこ!すぐにマウントを取るんじゃありません!年収の話は禁止!今さら出身大学の話もするんじゃないよ!それは大学の同窓会でやれ!

オイオイマジかよ!こっちがまだ結婚もしないうちに離婚するんじゃないよ!自分の元カノがバツイチで2児の子持ち、離婚原因はEXILE系の色黒旦那がよそでちんこをファンファンウィーヒッザステーッステーッしちゃったからだって聞かされて、俺はどんな顔すればいいんだよ!どう考えたって同じ風の中!ウィーノー!ウィーラーヴ!オー!とは言いがたいよ!もうやめさせてもらうわ!

 

 

 


はい。

やりきりました。まわってきたお題は「嫌いなもの」だったんですが、これで禊ができたと思います。20代の毒が抜け切りましたね。


明日の話をしようと思います。

 

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あしたは明るい日です。
自分へのご褒美に、ドラッグストアでキッチンペーパーを買って帰ろうと思います。
エレベーターを使わずに階段を昇って、健康に気を遣う意識高めなアタシを演出しようと思いますよ。大人の階段を昇るタイミングだけにね。ええ。

 

 

《10月企画バトン》冬の味覚

10月でこのブログが1才のお誕生日を迎えたそうで。おめでとうございます。
秋が好きなので、秋生まれなのが羨ましいです。
 
~・~・~・~
 
生まれた季節は春だが、秋に惹かれてしまう。
日が短くなっていく感覚、肌寒い気温、秋色の服が好きだ。ご飯もおいしくて最高。
賑やかだった夏と、肌を寄せ合う冬に挟まれた曖昧な時間はどうしてこんなに切なく、あっという間なのか。そこが好きなのだけれど。
 
秋が終われば、あっという間に冬がやってくる。
 
私は雪国で爆誕した。
小学校では体育の授業にスキーをし、休日の朝は父親と庭の雪かきをする。雪風を極力避けるため電車のドアはボタンを押さないと開閉しない。映画館もCDショップも無い。
田舎の生活は私にとってハードモードだった。まさしく冬の時代だ。
 
中学2年生の時だったと思う。その日は午前中で授業が終わりだった。
徒歩15分位の帰り道を1人で歩いて帰った。ダイナソーJr.を聞いていた。
ナンバーガールという既に解散していたバンドをインターネットで見つけて好きになり、彼らが影響を受けたバンドを熱心に聞いていた。
正直、それらの良さは当時全然分からなかった。
 
外はとても陽が照っていたが風が強く、風がぴゅうっと1つ走り抜けたあと、頭の上に冷たさを感じた。
イヤホンを外して頭上を触る。手を見ると水滴が付いていた。その年初めての雪だった。
雪なんて毎年見飽きていたが、なぜかその時は立ち止まって空を見上げた。眩しくて目を細めながら、顔にちらちらと降りてくる冷たさを浴びた。
 
口をわずかに開けてみた。
雪の味は知っていた。(吹雪だと嫌でも口に入ってしまうことがある。)
雪は大気中のゴミで出来てるから汚いって前に言われたけど、初雪だったら違うかもしれない、そう思った。
舌に乗せてみると、冷たいけどすぐに溶けてしまい、なにも味はしなかった。
やっぱりおいしくもまずくもなかった。
 
初雪だからといって、特別なことなんてひとつも無かった。
 
たったそれだけだったが、毎年初雪が降ると、この出来事を思い出す。
 
東京で過ごす冬も今年で7年目になる。
今年もこの街に初雪が降ったら、おぼつかない足取りで通勤する人々をニュースで見て苦笑し、すぐ遅延する電車にため息をつき、同時にあのひんやりした初雪の味を思い出すのだろう。
 
なんにもない味が、いつまでもいつまでも私の中で溶けずに残り続けている。
 
~・~・~・~
 
最後までご拝読いただきありがとうございました。お題は「初雪」でした。
この企画に参加でき嬉しく思います。
肌寒くなったかと思いきや夏のような気温に引き戻され、もう身体がへとへとです。。。
皆さまもくれぐれもご自愛下さい。良い秋冬にしましょうね。
 
 
上澄み(@__oldfriends)
 

 

《10月企画バトン》夏がくるたび

茜色がすぼみ、静かに広がる紺色が深くなる様を、時おり見上げながら歩く。
全身にまとわりつく熱く湿った空気とは、コンクリートの建物の中へ足を踏み入れたとき、別れた。

ひんやりとした空気のなか、階段を昇っていく。
盛んと働く換気扇の音が聞こえ、懐かしいにおいが漂う。

揚げ物だろうか。

空腹感をはっきり意識したとき、私たちは自然と小走りになった。

「ただいまー!」
脱いだ靴をそのままに、居間へ走る。
「やっぱりね!」
両手の荷物をその場に放り落とし、大皿の唐揚げをひとつつまむ。母の唐揚げは、私の大好物だ。
後から来た妹が、あっ、と声をあげた。
「これ!私のすきなやつじゃん!」
唐揚げの隣にある大皿を、指さして言う。
大場で巻いた茄子が、皿いっぱいにのっていた。
ところどころはみ出た味噌が、焦げていた。
「ばあちゃん生きてたときよく作ってくれたよね!味噌焦がしちゃったけど。焼き加減が難しいっけなあ」
「いやあ、久しぶりだあ、まさかこれがあるとは!やるね、母さん」

してやったり、という顔の母と、目を丸くする妹。二人の会話を、唐揚げ片手にぼうっと聞いていた。
私には、何の話かさっぱりわからなかった。

****

翌日朝早く、バス停へ向かう。
盆の帰省客にまじって乗り込んだバスは、ひたすら山道を走る。

ほとんど陽の当たらない山あいの集落で、降りた。あのおかずを作った祖母が、かつて暮らしていた家へ向かう。
納骨を行う予定だった。
今にも雨が降りだしそうな、暗くて重たい雲が、空を覆っていた。

家の前まで来ると、庭が見えた。
一面、緑色の雑草だった。
うんと高く咲くひまわりを、額に手をかざし、まぶしそうに眺める祖母がいたあの庭と、同じ場所とは思えなかった。

祖父と叔父だけが残った家へ入ると、知らないにおいがした。祖母が気に入っていた鳥の置物はほこりだらけで、よく見るとそばかすのようなカビがはえていた。

真新しい仏壇のある畳部屋では昔、お手玉を教わった。小豆の入ったあのお手玉は、祖母が作ってくれた。その行方はもう、わからない。

ただ、寂しい気持ちになるだけだった。

****

納骨の時間が近づいてきた。
家を出ようとしたとき、雨が降ってきた。
霧雨だったけれど、お骨が濡れないよう風呂敷で包み、両手で抱えて車に乗った。

墓が見えてきたところで、雨は本降りになった。
季節は夏の盛り。
でもこの日の雨はとても冷たく、身体の芯まで冷えた。

和尚さんの読経は、傘を打つ雨の音で、聞こえなかった。

皆の黒い傘は、咲いた花のようだった。
祖母がどこかで目を細め、この黒い花を、眺めているような気がした。

読経が終わり、お骨を納めようと墓石をずらすと、雨がさらに強くなった。
ざああという大きな音に皆が顔を上げたとき、祖父が大声をあげた。

「あーあ!ばあだべ!ここでひとりこになりたくねえって、忘れるなよって、泣いでんだべ!ほんに、すぐ泣ぐもの……」

祖母の涙にうたれながら、私は、昨日のあのおかずを思った。
祖母の家には色々な思い出があった。でも、あのおかずのことは、何も思い出せなかった。
姉ちゃんも一緒に食べたよ、と妹が言うのだから、私も食べたことがあったのだろうが、忘れてしまったらしい。

これからきっと、もっとたくさんのことを忘れていく。忘れるほど、ばあちゃんには会えなくなるだろうことを思いながら、再び、墓石が閉じてゆくのを見ていた。

****

納骨から数日が経ったある日、夕飯の買い出しにスーパーへ出掛けた。
野菜コーナーで茄子を見かけ、思わず手に取る。
小走りで大葉も探し、かごにいれた。
予定を変更し、あのおかずを作ることにした。

あの日、母に聞いたとおりに作った。
やっぱり味噌が焦げた。

「ばあちゃん、来年は焦げないように、作るからね」

両手を合わせて、目をつむる。
夏のこの時期だけでも毎年、祖母に会いたいと願う。

眼を開き、箸を手に取った。

****終わり*****


長くなってしまいましたが、
ここまで読んでくださった方、おりましたら、深く感謝申し上げます。
ありがとうございました。
お題は【すきなひと】でした。

記憶の中でしか会えない【すきなひと】が
私を生かしてくれているのだと思う日々です。

《10月企画バトン》お酒とわたしとその後

 

 

 

 


自分はどうもお酒だけで酔おうとすると、かなりの量を費やさないといけないということが判明したのが、1年前くらいのことで。

 


そこから飲む時と吸う時が重ならないように、と思って過ごしてきたので、基本的に人前や1人で外で飲んでいてもどちらかに傾倒するか、どっちもしていてもペースを理性でコントロールしているか、だった。

 

 

 


ただ今年の誕生日は、久しぶりに楽しかったので、考えることをやめてどっちも好きなだけやってみた。
隣に初対面のひとがいて、はじめましての挨拶もそこそこな状態だったくせに。

 

 


わたしは嫌われたくないしみっともないところをどんなひとにも見られたくない気持ちをいつも強く持っているんだけど、その時はそれを差し引いてもだいぶ酔いが回って気持ちよかった。
今まで付き合ったひとやそれなりに深い仲になった人の前ですらこんなに酔ったところを見られるのはなかったなあ、と思いながら灰皿に溜まった本数を数える視界がもうゆらめいていて。
いつもならそんなによく聴こえない左耳が、酔ってるとなぜかよく聴こえて、それがいちばん機嫌がよかった要因かもしれない。

 

 


ばいばい、と手を振って改札で別れた時までは、そんなふうにゆらゆらして多幸感に浸れていたんだけど。


そのあとは、もうただ落ちていくだけだった。

 

 


帰りの電車で座った瞬間にまずやってきたのは、いたみ。じわじわといたいのがきて、それはまだ多幸感という言葉で誤魔化せていた。
そこから頭が重くなって、でも目を閉じてもぐるぐるしていて眠れるわけでもない。多幸感の雲行きが怪しくなってきた。


次にやってきたのは、どうしようもなく空虚な気持ちで、なにもかもに期待が持てなくて、どこかになにか大事なものを忘れてきた感覚がするのに今更戻る気にはなれない時のあの気持ちだった。
こんなのは初めてのことだったから、まずその気持ちが込み上げてきたことに戸惑って、その気持ちに心当たりがついた時にまた戸惑って、戸惑いを誤魔化しきれなくなったそのあとはもうずっとかなしみに溺れてしまっていた。

 

お酒を飲むと、どうしても昔のやらかしたことやかなしかったこと、報われないきもちや怒りみたいなものが、ものすごいスピードでよみがえってしまうらしい。

 

 

実はその日の演奏会で、後輩が周囲ときちんと折り合いをつけられないまま部活を引退するということを、本人以外の口から聞いたこと。

 

ステリハで聴いた前プロの曲の出来が、あまりにも不安すぎて堪らなかったこと。

 

実は思っているより、大事な後輩のピンチに気づいてあげられていなかったこと。

 

内定が決まったはいいものの、その選択でほんとうによかったのか今でも不安で仕方ないこと。

 

バイト先の店長と日本語を話しているはずなのに全然意思疎通が取れなくて、女の子はおろかお客さんですら大事にしないその態度に対して静かに怒りつづけていること。

 

長生きしたくないのに、年金を払いつづけていること。

 

生かされたくないのに、生きていてほしいと思う人をなんとかして生かそうとしている時点でもう生きる理由にを得てしまっている矛盾に気づいてしまっていること。

 

あの時どうしてもっと助けてくれなかったの、と泣いている自分のことをうまく助けられないもどかしさ。どれだけドライブデートがあの時楽しかったといえど、どんな些細な行為も癇に障ったらどうしようと思って5時間ずっと気を張っていて実はとても疲れていたということ。誰かに身を預けることがどうしても怖くてできなくて、誠意を欠いた態度をとられることの方が逆にセオリー通り・予想通りで安心してしまうこと。「お前の学費がいちばん家計を圧迫しているんだ」と何の気なしにいえる母親の態度や、自分のかつての生き方や理想を押しつけてくる父親、そういう"族"の呪縛から解き放たれたいのに、「家にお金がない」というただそれだけの言葉に雁字搦めになって最後までやりたいことをやりきることが怖くなる。預金がなくなったら、楽器をいつかやれなくなる未来を想像したら、棺桶に入れられた恩師の普段とは違うおそろしく穏やかな寝顔、彼女の通夜の帰りに仙台駅まで歩く中彼女の死が突然のことすぎてなにも言葉が思い浮かばなくて、「どうして、わたしを連れていかなかったんですか、」と小さくぼやいたくらいで、今日誕生日であんなに楽しい思いをしたのにどうしてこんなに悲しい思い出ばかりつよく呼び起こされるのか、

 

 

 

 


『×××、×××駅です、お出口は左側です、』

 

 

 

 


アナウンスが現実に引き戻してくれて、慌てて電車を降りた。
今日お手伝いとして参加したお礼に渡されたマドレーヌ、誕生日プレゼントに頂いたハンドスピナー、ジャケットの中には携帯と家の鍵とパスケース、ぜんぶがあった。

 


酔いは完全に冷めていた。階段を上がろうとした瞬間に左耳がここぞとばかりに耳鳴りして、現実がまたやってきたんだと思ったらどうしてもやりきれなくて涙ぐんでしまった。


階段を上りながら、今日一緒に飲んでくれたひとにお礼のメールを打つ時ですら、わたしは幸福とかなしみの境目が曖昧だった。

 

 


0:32、日付が変わって、もうわたしは21には戻れなくなってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宕子

 

 

 

 

 

 

気温と記憶

この季節になると毎年思い出す。

昔、といっても大学生の頃のはなし。

 

私は美術の大学に通っていました。森とくっついたような田舎の大学。

野生の猿はコンビニの袋をかっぱらっていくし、森で簡素な囲いだけで飼ってるシカはすぐ脱走する。なぜか敷地の中央には孔雀の檻があって、授業中にバカでかい鳴き声が響き渡る。

 

通っている学生もそんな生き物たちに負けず劣らず派手で個性的で。

絶滅したと思われるヒッピーも、町中では希少種のゴスロリも沢山いて。

 

登校すればどうやってやったのか校舎から校舎にかけて謎の布が張り巡らされていたり(インスタレーションとかいうやつ)、夕方になれば太鼓や笛やらをドンドコピーヒャラやりながら練り歩く集団が現れる(阿波踊り部とかいうやつ)。

森から切ってきた竹で流しそうめん会が開催されてた時もあったっけ。

 

私も当時はそんな大学に馴染むくらいの派手な格好で。オレンジのロングコートだけで3着持ってたし、色彩の暴力という名前をもらった事もあった。

制作に行き詰まったら友達と図書館で映画見たり森を散歩したりして。夏はほとんどなかったけど、冬は暗くなったらカセットコンロ出してきて外で鍋やって。いつの季節も安いウィスキーで手っ取り早く酔っぱらって。通りかかった教授もついでに巻き込んで。(当時は学内で飲酒しても良かった)

 

まあそんな大学での学祭は想像以上に派手で。鉄筋で組んだ建物が一気に立ち並び(純粋に流石としか言いようのない速さとクオリティで、多分素人が建てていい高さじゃなかった)、コスプレがうじゃうじゃ練り歩き、どこもかしこも音楽が鳴り響き、24時間制は廃止になっていたものの朝一番から全裸の酔っぱらいが踊っているような、そんな学祭。暗くなってからの青いビニールシートの中は要注意で、潰れた酔っぱらいか酔っぱらいの吐瀉物か、青姦バカップルが包まれている。最後のゲストは逮捕直前の田代まさしだったっけ。

 

帰り道に転がってる見知らぬ酔っぱらいはとりあえず拾って大学近くに下宿してる知り合いの家で大量の水を飲ませたりして。それなのに元気なバカたちはその横でまた更に飲んで。気がついたら夜明け。タバコの煙で真っ白な部屋。空き缶に突っ込まれ損ねた吸い殻がカーペットに焦げ付いていて、その上に転がったであろうバカの足はなぜか傷だらけ。化粧も何もかもボロボロのまま眩しい朝日を睨みつけてまた祭に出る。冷たい風に当たるとなぜか頭だけは冴えきって、また始まる三日間の死ぬ気の耐久レース。それが祭だった。

 

 

しかしある事件のあと、そんな学祭がなくなった。

正しく言えば、アルコールが学内全面禁止になった。それは学祭がなくなったのと同義だった。事件が直接それと直結している訳ではないという意見もあったが、ほぼ直結に近い話だった。

 

今から思えば時間の問題で、寒い田舎道で拾われなかった酔っぱらいたちは危険すぎた。

学内は禁酒を巡ってかなりの物議を醸した。酒がなければ祭じゃない。そう思う人間が相当数いた。祭に近い人間ほどそう思っている人間は多かったが、事件の事も良く知っていた彼らはアルコール禁止についてほとんど文句を言わなかった。言えなかった。

私は彼らよりは遠巻きに騒動を見ていたけれど、それでもあまりに近すぎた。

 

最終的に全面禁止になった翌年からの学祭は動員もかなり減り、コスプレ会場と化した。代々育て上げた学内に棲んでいた大きな魔物が、消えてなくなった。そうすべき方向に向かうことは何かにとっては成功だっただろうが、何かにとっては失敗だった。

事が起きてからではなにもかもが遅いのだ。何も返って来ない。

 

彼女は今でもこの季節になると「いつでも来てくださいよ、部屋やっと掃除したんで」と人懐こく笑う。繰り返し、繰り返し。何度も。

《10月企画バトン》 世話ばかりかけちまったな。

いやぁ、映画って本当に、素晴らしいですね。
どうもこんばんは、水野忠邦です。

 

さてさて先日までストレングス猿であった私めにも、
なにやら文章を書く順が回ってきたようですね。

 

さぁ〜〜てお題は何かね。
今の私は戸愚呂で言えば80%の出力。
本部以蔵で言えば宮本武蔵戦。
………既に出来上がっている……!!

 
いかに難解なお題目も、完璧なロジックにてさらりと捌く事が可能!!

 

米朝間の緊張状態を解く妙案はありますか!?』
そんなお題には手首を捻ってこう!!!
足を払いつつ腰を軸にこう!!!!
オーケー、捌ける。

 

『生命とは!?』

そんなお題には初弾を躱してこう!!!
左のカウンターからこう!!!!
オーケー、捌ける。

 

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 さあ来なさい!

 

 

 

 

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………?

 

 

…………あかり??

 

 

 

知り合いには、いないけど………。

 

 

 

あかりって????

 

 

 

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これはゆかり。

 

 

 

これは?

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そう、ご存知サトリ。

 

 

ではこれは?

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言わずもがな赤痢
(夏の季語だそうです)

 

 

 

あかり??

 

 

 

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おぉフ……
なるほど……

 

 

 

敵を知り 己を知れば百戦常にperfect body。
孫子にも書かれている。

委細承知した。

 

 

 

 

 

 

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 ……ァハァ〜〜ン、おなご達が麻雀🀄️を始めるアニメーションでござるな?

 

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このおなごがあかり殿でござるな。
やはり主人公との事なので、得意なアガり役は嶺上開花であろうな……

 

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…………………。

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…………………………………。

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………………………………………

 

 

 

 

 

 

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ッンフ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!

 

 

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………………。

 

 

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………………

おわっ………た………?

 

 

盛り上がりもギャグも、
タコスも麻雀牌も、豪運も轟盲牌を用いたドラ72も存在せずただただ終わった……
(牛は4匹増えた)

 


俺には……あかりの事ァ何一つわからなかった……

 

 

 

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                        -fin-

《10月企画バトン》電球色

おはようございます!

こんにちは!

おばんです!(こんばんはのこと)

 

老若男女知らないひととも気軽に挨拶を交わす田舎で育ちました。

 

幼い頃、近所に住まう大人の女性たちは主婦であることが多かったように思います。

夏には夕方6時冬には夕方5時を知らせる音楽が防災無線から流れる頃、小さな町は温かい夕飯の香りがしていました。

 

金曜の夜は母が換気扇の下で鼻歌を歌いながら(変なダンスも入る)、チョコレートを入れたりブルドッグソースを入れたりコーヒーを入れたり何やかんや入れるので毎週味が安定しないけれど美味しいカレーを煮込みます。

 

娘のわたしは友達と一緒にアリジゴクを掘っくり返したり山を走り回ったりその辺の綺麗な石をそっとポケットにしまったりして遊び疲れ、ご近所中の美味しい香りの中を家路につきます。

 

女性陣がおのおのルンルンしている頃、とにかく何でも分解するのが趣味だった弟は友達のラジコンをまたしても部品の山へと作り替えて怒られていたりします(これは後で大人が復元します)。

 

父は店を閉め、自宅へ向けてハンドルを握りFMラジオを付けます。1時間半の運転です。ラジオは途中で青森の放送局から岩手の放送局へと切り替わりラジオパーソナリティの方言も変わります。

 

4人揃えば夕食です。

何があっても夜は一緒に食卓を囲みました。

 

 

母はいつも柔らかい空気を纏っていました。

母が磨く家も同じ空気を纏っていました。

4人が住まうそこは訪れたひとが長居してしまう、自分の家のように落ち着く家でありました。

 

 

時代は変わります。環境も変わります。子どもは大人に向かい、大人も日々変わります。家族に1匹が加わることもあります。

その日、その年、その頃、丸くなったり尖ってみたりグニャグニャになったりする家族を老いながら包み続けたあの家はおん歳幾つなのか。

 

 

あの頃わたしたちは家族4人揃って食卓を囲みました。あの頃の記憶は温かみのある電球色に包まれています。

 

誰かが電球色にしてくれていたのでしょう。

父の厳格な父であろうとしたその意識かも知れないし、母の柔らかさの奥にある肝の座った強さかも知れないし、弟のナイーブを伴う自由さかも知れないし、私の、私のー、なにかなー笑

 

 

今これを読む貴方の家は建物ですか?街ですか?人ですか?ネットですか?自分自身ですか?

 

今これを読む貴方の家は何色を纏っていますか?

そこは暖かい?

香りはありますか?

みんなの記憶の中のあの時の家は何色?

 

 

頂いたお題は「家」でした。

まず思い出したのは一番温かい家の記憶。

でも建物以外でも家になり得ますよね。

 

いつか誰かの家になる時が来たら、いつか誰かの家を磨くときが来たら、帰りたいと思ってもらいたいものです。

 

なーんて。てやんでい。

 

そのためには〜〜〜ってのはまた別のお話し。てやんでい。

 

 

貴方の家があなたの望む家でありますように。

おやすみなさい!

 

お恋

ドレミの歌

ド~は「ドラゴン・タトゥーの女の」のド~

 

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レ~は「レオン」のレ~

 

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ミ~は「Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!」のミ~

 

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ファ~は「ファイナルデッドコースター」のファ~

 

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ソ~は「ゾンビランド」のソ~

 

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ラ~は「ランド・オブ・ザ・デッド」のラ~

 

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シ~は「ジュマンジ」のシ~

 

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以上、俺の好きな映画たちでした

 

 

アミーゴ銀三郎

 

 

7664日目が、おそらく今日だ。

 

 

よくもまあ生き延びてきちゃったな、とおもう。

去年の今頃はもう少し希望に満ち溢れていたんだけど、なんか改めて振り返るとクレイジー極まりない1年だったなということしか思い浮かばない。

しかもいまは全然そんな希望に満ち溢れてないのがウケる。言葉を選ばずにいうなら、もうチョー死にたい。45歳までなんて待てないよバカ!みたいな。

 

 

45という数字で人生に決着をつけたがるのは、恩師がその歳で死んで、彼女の死顔を目の当たりにしたその時にわたしの中でひとつ大きな目標が欠落してしまったからだ。

 

「彼女に会えない人生なんか生きたって仕方ないし、彼女より歳をとりたくなんかない、彼女より"先輩"になんかなりたくない」

と思いつづけて、もう5年経つ。

まだまだこれが根づよく残っているんだけど、でもよく考えるとあと23年しかないの?って気づいていつもため息がとまらない。

圧倒的に時間が過ぎるのが早い。もう早い。このままだと死んだ後で死んだことに気づきそうだ。

 

 

てなわけでこうしてブログも一年経とうとしています。わたしがお世話になるのと同じで、このブログもこんなにお世話になりました。

わたしは図々しい人間なので、「えっまだ隣いるの?」みたいな顔をされても隣にいます。

 

1年前、なんか面白いことしたいなつって勢いではじめて、勢いに勢いをプラスして、なんかとりあえず様子見つってtwitterアカウントも8月中旬に作ってみちゃったりして。

 

その時にこんなに書いてくれるひとが名乗りでてくれるとも思ってなかったし、こんなにアクセス数が増えるとも思ってませんでした。

こんな見切り発車の企画にみんなが面白がってくれて、正直にいえば自分より面白がっているみんなをみて、「あっこれ面白いものだったじゃん」って我にかえることが多かったです。

 

そしてそうやってわたしを引き戻してくれる役割を、このブログが果たしてくれていました。

結果として、twitterを辞められない理由になり、多くの新しい書き手さんに出会うことになり、まだそう簡単には死ねない理由のひとつになりました。

 

みなさんのおかげです、どうもありがとうございます。

まだまだ企画は続くし、まだまだ面白いことしていきたいので、つらいことや苦しいこと、楽しい日々や嬉しかった思い出を数える片手間に、どうかこのブログを見ていただけたら幸いです。

 

 

それではまた、一年よろしくお願いします。

 

 

透子

 

 

 

 

《10月企画バトン》「無限大な夢のあとの

何もない世の中じゃ」


これは私の好きな歌の歌詞の一部。

小さいときの私はこの曲が主題歌のアニメがすごく好きだった。

キャラクターのぬいぐるみは持っていたし、アニマックスで放送されていたものを録画して何度も何度も見た。

最終話の感動シーンはYouTubeで断片的に見るだけでも泣けてくる。(とても良いアニメなので興味がある方は「デジモン」で検索)


最近生きていると何度か遭遇する人生の岐路に再度立ち選択をした。

好きなものはあるけれどそれを職にする勇気はなかったし、自分の能力の無さのせいにしてそのための努力をしなかった。

とりあえず選んだ道ではあるけれどこれでよかったのか、私はこんな自分になりたかったのかを今死ぬほど考えている。


幼稚園生の時は「ピカチュウ」になりたかった。そう七夕の短冊に書かれていた。人ですらない、そもそも現実に存在しない。幼稚園児らしいクスッと笑える可愛らしい回答だ。

あと「お花屋さん」にもなりたかった。花はそこまで好きではなかったけれど大好きな祖母がお花が好きだったからだ。

小学生の時は「漫画家」になりたかった。漫画を読むのが好きだったからだ。絵を描くのも好きだった。

中学生の時は「通訳者」になりたかった。英語が好きで英会話が得意だったからだ。

高校生の時は「外交官」になりたいと思っていた。英語以外の外国語を勉強していたこともあって世界に興味があった。世界を股にかけて活躍する人に憧れていた。好きな英語を使えると言うのにも惹かれていた。もっといい世界にしたいだなんて考えてた。

大学生の今は特に何も考えてなかった。英語を勉強しているし好きだけれど自分よりできる人なんてたくさんいる。私には無理なんじゃないかって諦めて考えるのをやめた。ネームバリューがあるから、安定してそうだからとかそんなつまらない理由で将来を考えていた。


本気じゃないんだもん、そりゃ上手くいくわけないよな。「無限大な夢のあとの何もない世の中」を作ってしまったけど、何かをするのに遅すぎるなんてことはないよね。


「そうさ愛しい 想いも負けそうになるけど Stayしがちなイメージだらけの 頼りない翼でも きっと飛べるさ Oh My Love」


和田光司さんのButter-Flyでお送りしました。


よし!今日も元気に頑張っていきましょう!

《10月企画バトン》愛を込めて花束を




みなさん、秋の夜長にこんばんは♡


タイムラインに舞い降りた、プリティーキュートなツイガール☆ことあんしんちゃんです♡


今1番悩んでることは、明日かれぴっぴのお家にお泊まりするかどうかなの~♡




もう疲れたのでこのキャラやめますね。















改めましてこんばんは。

最近は愛する彼氏の影響で競馬に興味があるあんしんちゃんです。

これは函館競馬場で見た馬です。

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企画の最初の2人とは違い、騒がしくてすみません。この喧騒を例えるなら、湖のほとりで静かな水面を見ていたところ、隣で水切りを大騒ぎでし始めた小学生のような、ちょっと私も何言ってるのかわかんないんですけどそんな感じの喧騒でお届けしていきます。



さて、「うまくいえないひとたち」1周年おめでとうございます。面白い企画だなと思い、見始めてから早1年。知っている人たちばかりだったところから、今はFF外の存じ上げない方も多くいらっしゃり、1年前とはまた違った空気なのかなと感じています。私も最初の頃1つだけ記事を投稿させていただいたのですが、今読み返してみると酷い文章だし元彼の話出てきてるしで……なんていうか頭を抱えてしまいましたね。



昨年の記事で「誰かに努力を認めてもらわなくていい、自分がわかっていればいい。ただ褒めてもらえると嬉しいよね。」みたいなことを言っていたんですけど、今はこの真逆です。「何してても褒めてほしい!起きたら褒めてほしいし、課題が終わったら褒めてほしい!最終的には息をしてても褒めてほしい!!」って感じです。



きっと私は肯定を求めているんだと思います。



肯定感には、自身で得られる肯定感と、他者から与えられる刺激によって得られる肯定感の2種類があり、前者と後者は密接に関連していると私は思っています。


まあ要するに何が言いたいのかと言いますと、相手にプラスのストロークを与えていこうというわけです。私も肯定されたいし、きっと他の人も肯定されたいと願っていると思います。


愛を持って肯定的に他者と関わっていくことのできる人になれたらなぁと思います。




繁忙期の働かない頭でなんとかお題をねじ込みましたが、着地に失敗しましたねこれは。やばい。どやさ。この記事は来年また見て反省したいと思いま~~す!!!!どうもすみませんでした~~!!!!




彼氏に「愛」とは何かを聞いてみたので、その回答と共にお別れしましょう。










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以上です。大変申し訳ありませんでした。

企画してくださったとうこちゃん♡愛してます♡



あんしんちゃん

適切なフィクションに関する独り寝

 仕事がつらくて、苦しい。恋人と一緒に過ごす夜は、しずかであたたかく、やわらかい時間の手触りがある。愛している、というよりも先に朝が来て、もうひとりで玄関の扉をあけなくてはならない。そこには逃げ場所や逃げ道がなく、私はどうしようもなく不適切だ。

 不適切。適切な世界における自分自身のこと。他者はいつだって適切だ。

 彼が薬をODした。ごめんね、と私にさっと謝って、逃げ水のような声の響きだった。手首を切って泣いた母親の水にぬれた声とは違っていた。

 靴を脱ぎ捨てて、この適切な世界からはだしで走り出して逃げてしまいたい。何を求めるというのでもなく、あなたの愛に疲れたら、ひっそりと一人で眠るのもいいものだ。

《10月企画バトン》絵描きの幸福

 

 

 おちうること。あなたのまね。とべぬこと。飛び魚のはね。叫ばぬこと。ときのしらべ。ノートルダムの鐘。わたしのゆめ。赤い屋根。溶けだす殻。清らかな水。くぐりぬける木陰。わたしは、立っていた。濡れた土のつめたさと足の肌の熱さを感じて。わたしは、見ていた。苔がひをあびてよろこぶさまを。わたしは、むさぼっていた。わたしは、それを少しずつ、ゆっくりと。植物が花びらをひとつずつひらいて、それをつまびらかにするように。わたしも愛を噛まずに食んだ。

 

 鯨に鱗はあるの?鯨は哺乳類だからないよ。ねむりに暗闇はあるの?それは死だから暗闇はないよ。節度を保つこと。いいえ、私は傲慢なの。いっとう澄んだ水を汲んできて。降り止まぬ雨。飛べない翼。繰り返す声。わたしはいったいどこにいるの?わたしはいったいどこにいるの?あなたはそこ、ここ、赤い炎のなか。燃えている、あなたが燃えている。星が落ちてきた。空も落ちてきた。ああ、世界が反転する。回転する。落ちてくる、落ちてくる!

 

 うまく話せないから黙っていて、 黙っていてね。わたしの声に静寂が詰まってしまっても黙っていてね、静かにしていて。黒いトマト。世界はもうどこかへ行ってしまった。わたしは消えてゆく。消えてゆく。

 静かに、静かに。

 身を守るの。あの場所へ帰るのよ。ガラスのコップは落ちて砕けた。だめ、だめ。くるってゆくの世界は。くるってゆくの。あなたはあの森を歩いて、空が暗いことに気づくのよ。火を焚いたら獣がでるわ。あなたはその爪で深い傷を負うの。雨があなたを濡らして、熱を奪い去ってゆくわ。あなたはもうどこにも行けない。

 治る、治るの。

 もう一度、踏みつけたあの花びらを拾うのよ。さあ拾って。そう、抜け殻は捨ててしまって、また初めに戻ればいいの。滑らかな皮膚。あなたのもの。誰にも傷つけられないあなたの肌。石の花を溶かして、それを全部飲んでしまって。たったコップ一杯にしかならないわ。あなたの命はわたしのもの。涙はどこにも流れない。味覚を焦がしてしまえば、味なんてわからない。少し開いた戸に滑り込んで、わたしは、鍵をかける。あなたの首……

 あの猫にチョコレートをあげて。あだばなが咲いたわ。項垂れて眠る。夢を見た。首輪を盗む夢を。ガラスが割れる音がして目を覚ました。わたしの部屋には風が吹き込んでいた。西の窓も北の窓もこなごな。仕方のないことなんだわ。だってわたしのことだもの。たとえ部屋が燃えたって仕方ないわ。それに大丈夫。わたしは生きているんだもの。花にオレンジジュースをあげる。わたしがいちばんお気に入りのジュース。すこし高価だけどいいの。大切な花だから。これで一年中わたしの部屋は外の海に溶け込むことができる。お花ともお友達ね。せっかくだからどこかへ飛んでゆこうかしら。あっ、小さな燕が鳴いてる。

 スミレの歌声。陽炎の涙。アスファルトの怒り。蟻のよろこび。熊の昼寝。星の嘆き。わたしのただしさ。わたし紙飛行機にのってとっくにへ行ったら、もう帰ってこない。わたしがつけた肌の傷。それは徐々にあなたから消えてゆく。雲がそらを流れるやさしさで薄くなってゆく。浅い眠りがわたしをおだやかにしたの。この宝物を大切にして。あなたにあげるから。